屋根を軽くすると、耐震性UP?

瓦屋根は重いから地震の時危ないですよ!軽い素材に替えましょう



そうよね。大地震で瓦が崩れてるのをTVで見るし・・・
大きな地震が起こるたび、「瓦屋根は重いから軽い素材に替えると耐震性がUPする」と聞くことがありますが、これは本当なのでしょうか?



このページでは「屋根の重さと木造住宅の耐震性」について、お話します
建築基準法で定められた耐震基準
地震が多い日本では、木造住宅建築に対して建築基準法で定められた耐震基準というものがあります。
1950年に建築基準法が施行されてから50年のあいだ、耐震基準は大地震が起こるたびに見直されてきました。
~1981年(5月) | 1981年(6月)~2000年(5月) | 2000年(6月)~ |
旧耐震基準 耐震性低い 大地震で倒壊する危険大 | 新耐震基準 2000年新基準を満たしていない 大地震で注意が必要 | 新・新耐震基準 様々な対策がなされた 大地震の耐震性は高め |
旧耐震基準(~1981年5月)
1978年(昭和53年)6月12日、仙台市にてマグニチュード7.4の地震が発生しました。死者16人、重軽傷者10,119人、住宅の全半壊が4,385戸、一部破損が86,010戸と大きな被害が生じました。
この地震をきっかけに耐震基準が見直され、1981年6月以降の木造住宅は「新耐震基準」で建てることになりました。
1950年 | 建築基準法施行 |
1978年 | 宮城県沖地震 |
1981年 | 建築基準法大改正(新耐震基準施行) |
新耐震基準では、屋根の重さを考慮した構造計算が義務付けされました。屋根重量に応じた壁量・柱・梁の太さ・強固な基礎等が確保され、以前よりも約1.4倍の壁量が必要になりました。



大きな地震をきっかけに、基準が見直されることになったんだね
新耐震基準(1981年6月~2000年5月)
1995年1月17日、兵庫県南部を震源とした地震(阪神・淡路大震災)が発生しました。
日本で初めての大都市直下を震源とする大地震で、気象庁の震度階級に震度7が導入されてから初めて、最大震度7が記録されました。


この大地震で6,000人以上の命が奪われ、その死因の約8割は家屋の倒壊や家具などの転倒による圧迫死でした。
震災後の調査で、被災した木造住宅の98%が旧耐震基準で建てられていることがわかりました。新耐震基準で建てられた建物の7割超は軽微または無被害だったそうです。
このことから新耐震基準の有効性が明らかになりました。



倒壊がなければ助かった命が沢山あったんだね。。。
新・新耐震基準(2000年6月)
新耐震基準が有効なことは明らかになりましたが、さらなる木造住宅の半壊・倒壊被害を減らすべく、2000年に「新・新耐震基準(2000年基準とも呼ばれる)」が施行されることになりました。
1995年 | 阪神淡路大震災 |
2000年 | 新・新耐震基準(2000年基準)施行 |
2000年基準では、
①地盤に合わせて基礎を作る


②柱や梁・筋交いの部分に金具を使ってしっかり固定する


③バランス計算の義務化(壁の質や量をバランスよく配置する)


など耐震性が向上する規定が盛り込まれました。
新・新耐震基準の有効性について
熊本地震
2016年4月14日夜および4月16日未明、気象庁震度階級では最も大きい震度7を観測する地震が熊本県で発生しました。
熊本県益城町で揺れの大きさは計測震度6.7で、東日本大震災の時に宮城県栗原市で観測された計測震度6.6を上回り、国内観測史上最大となりました。


熊本地震における耐震基準の違いによる被害状況(木造住宅)がこちら。


旧耐震基準の約半数が「倒壊/崩壊/大破」だったのに対し、新耐震基準では「軽微/小破/中破/無被害」が約8割でした。
新・新耐震基準にいたっては約9割強が「軽微/小破/中破/無被害」と耐震基準の有効性が明らかになりました。
能登半島地震
2024年1月1日、石川県輪島市と羽咋郡志賀町で最大震度7を観測する地震が発生しました。
死者500人越え、住宅の全壊は7,700棟超えと報告されています。最も被害が大きかった珠洲市宝立町では津波により家屋が流出、輪島市では大規模火災が発生して約240棟が焼損しました。


能登半島地震における耐震基準の違いによる木造住宅の被害状況がこちら。


新・新耐震基準では約98%が「軽微/小破/中破/無被害」でした。この地震でも耐震基準の大切さが示されました。
新耐震基準で「屋根の重さを考慮した構造計算」が義務付けされ、新・新耐震基準で「地盤検査・金具固定・バランス計算」が義務化されたことにより、どちらかの基準で建てられた木造住宅は大地震に対して(0にするのは不可能だけれども)耐震性があると言えます。
反対に、旧耐震基準(1981年5月より以前)で建てられた木造住宅は何かしらの耐震対策をとらないと、大地震の際に倒壊・崩壊してしまうリスクが高いと言えるでしょう。



しかし、本来の日本家屋は瓦の重さに耐えられるよう太い柱や梁を使って建てられていたため、1981年以前に建てられた家でも耐震性に問題ないものも多く存在します
耐震リフォームは必要?
大地震から命と建物を守るために、まずは住んでいるお家がどの基準で建てられたのかを確認しましょう。



うちは2005年に建てたから・・・
施行年月 | 想定震度 | 屋根の重さを考慮した構造計算 | 地盤検査 | 筋交い等金具留め | バランス計算 | |
---|---|---|---|---|---|---|
旧耐震基準 | ~1981年5月 | 震度5強程度 | ✕ | ✕ | ✕ | ✕ |
新耐震基準 | ~2000年5月 | 震度6~7程度 | 〇 | ✕ | ✕ | ✕ |
新・新耐震基準 | 2000年5月~ | 震度6~7程度 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |



新・新耐震基準ね!



もし「旧耐震基準」または「新耐震基準」に当てはまる場合は、下記の項目を確認しよう!
①住んでいる場所の地盤を確認しよう
地震が起きたとき、同じ地域なのに被害状況が大きく異なることがあります。それはその土地の地盤が影響しているからです。
地震に弱い地盤は、地震が起こった時に液状化現象が起こりやすいと言われています。
建物の倒壊を防ぐために、まずは住んでいる場所の地盤を確認しましょう。


地震が起きたとき、同じ地域なのに被害状況が大きく異なることがあります。それはその土地の地盤が影響しているからです。
地震に弱い地盤は、地震が起こった時に液状化現象が起こりやすいと言われています。
建物の倒壊を防ぐために、まずは住んでいる場所の地盤を確認しましょう。





建物が建っていても住んだまま地盤改良ができます!
詳細は下記リンクを参照ください(外部サイト)
②耐震診断調査を検討しよう
自宅の耐震性に不安がある場合は、専門家に耐震診断調査をお願いしましょう。
診断の多くは、下記のような基準で評価されます。
評点1.5以上 | 評点1.0以上1.5未満 | 評点0.7以上1.0未満 | 評点0.7未満 |
◎ | 〇 | △ | ✕ |
倒壊しない | 一応倒壊しない | 倒壊する可能性がある | 倒壊する可能性が高い |
「筋交いを入れる」「耐震壁を増設する」「接合部を金物で固定する」などの耐震リフォームを行うことで、倒壊のリスクを減らすことができます。







住んでいる市によっては建てられた年月によって、調査費用やリフォーム費用に補助金を出しているよ
③瓦屋根を釘留めしよう



うちの家は「新・新耐震基準」だから、地震対策はバッチリね



ちょっと待って!そうとも言えないんだよ
明治から昭和初期までは、瓦屋根の固定には水で練った土が使われていました。昔はあえて瓦を落下させて地震から住宅崩壊を防ぐという考えがありました。


明治から昭和初期までは、瓦屋根の固定には水で練った土が使われていました。昔はあえて瓦を落下させて地震から住宅崩壊を防ぐという考えがありました。


1923年に起こった関東大震災を境に、土を使って固定する工法から、桟木(さんぎ)を設置しそこに瓦を引っ掛けて固定する「引っ掛け桟瓦葺き(ひっかけさんかわらぶき)」という工法が主流となりました。
1971年、建設省(現在の国土交通省)より「屋根瓦は軒及びけらばから2枚通りまでを1枚ごとに、その他の部分のうち棟にあたっては1枚おきごとに、銅線、鉄線、くぎ等で下地に緊結し、又はこれと同等以上の効力を有する方法ではがれ落ちないように葺くこと」と瓦の緊結が告示されました。


1923年に起こった関東大震災を境に、土を使って固定する工法から、桟木(さんぎ)を設置しそこに瓦を引っ掛けて固定する「引っ掛け桟瓦葺き(ひっかけさんかわらぶき)」という工法が主流となりました。
1971年、建設省(現在の国土交通省)より「屋根瓦は軒及びけらばから2枚通りまでを1枚ごとに、その他の部分のうち棟にあたっては1枚おきごとに、銅線、鉄線、くぎ等で下地に緊結し、又はこれと同等以上の効力を有する方法ではがれ落ちないように葺くこと」と瓦の緊結が告示されました。


しかし実際は、2000年の建築基準法改正~2001年瓦屋根標準設計・施工ガイドラインが発行されるまで平部の留付け方には職人によってバラつきがあり、釘留めしていない瓦屋根は、地震の時に瓦が崩れたり飛んでいってしまう可能性があります。





2000年に建てた家も怪しいのね・・・
大地震のあとは、工事会社がすぐに来てくれるとは限りません。ブルーシートは手に入りにくく、また屋根の上にのぼる作業は危険が伴います。



瓦の家は、釘留めされているかどうかを確認した方が安心だよ
④瓦屋根の葺き替えを検討しよう
ついに!
最初でお話した「瓦屋根は重いから軽い素材に替えると耐震性がUPする」について解説したいと思います。
耐震性UP?
ここまで読んでいただいた方にはなんとなく伝わっていると思いますが、結論は、



旧耐震基準で建てられた瓦屋根は、軽い屋根材に葺き替えた方が耐震性がUPする
です。
重たい瓦屋根の家は重心が上にあり、大きな地震の際は重心が低い家と比べて振れ幅が大きくなります。


揺れが小さい方が建物へのダメージが少ないため、耐震性がUPしたと言えます。



しかし、それ以外に瓦屋根を葺き替えた方が良い理由がもう一つあるんです!
飛び火に注意
それは、火災によって起こる飛び火火災問題です。



飛び火って?
goo辞典より
瓦屋根は、瓦と野地板の間に隙間があり、通気性が良く屋根裏の湿気を排気してくれる構造になっています。
建物にとっては、結露を防止したり熱をこもらないようにしたりと良いことばかりですが、近隣で火災が起きたときには、風に乗ってきた火の粉がその隙間に入り込み、着火してしまう可能性があります。


瓦屋根は、瓦と野地板の間に隙間があり、通気性が良く屋根裏の湿気を排気してくれる構造になっています。
建物にとっては、結露を防止したり熱をこもらないようにしたりと良いことばかりですが、近隣で火災が起きたときには、風に乗ってきた火の粉がその隙間に入り込み、着火してしまう可能性があります。


近代の瓦屋根は、防水シートが燃えにくい素材だったり、火の粉が隙間に入らないように工夫してあるため、飛び火火災が起きる確率はほぼ無いと思いますが、築約60年以上前の瓦屋根には防水シートに土や薄い木の皮が使われている可能性があるため注意が必要です。




1923年に発生した関東大震災、東京では多くの人たちが火災によって命を落としたそうです。


阪神淡路大震災でも、死因の7割以上が圧迫死でしたが、次に多いのは焼死・焼骨でした(約1割)。


せっかく瓦を留めたり筋交いを金具固定して建物の倒壊を防いでも、飛び火火災で建物が燃えてしまっては耐震リフォームの意味がありません。



この機会に、築年数が古いお家は屋根材の葺き替えを検討してみてはいかがでしょうか?



中古物件に住んでいる人も、築年数に合った対策を考えよう!
建物から水分を守ろう



水分は耐震基準に含まれてないよね?
耐震リフォームといったら、「屋根を軽くする」「筋交いで補強する」など、地震に対して直接的に関係するものばかりを想像しますが、やねかべマイスターは屋根屋さんとして建物を水分から守る対策を追加します!
木造住宅の場合、建物の耐震性には木材の強度が強く関わってきます。そして、その木材の強度に関わるのが「水分」です。
床下の土中水からの湿気・浴室からの漏水・屋根や外壁面の結露・雨漏りなどによりカビや蟻害、腐朽菌が発生します。




木造住宅の場合、建物の耐震性には木材の強度が強く関わってきます。そして、その木材の強度に関わるのが「水分」です。
床下の土中水からの湿気・浴室からの漏水・屋根や外壁面の結露・雨漏りなどによりカビや蟻害、腐朽菌が発生します。




シロアリは木材を食べて中をスカスカにしてしまいます。腐朽菌は木材はボロボロにします。どちらも木材の強度が弱まり、崩れやすくなってしまいます。



木材の強度低下を防ぐため、そして住民の健康を守るため、建物を水分から守ろうー!!
屋根からの雨漏りを防ぐ・・・屋根カバー工法や葺き替え工法を行う
壁からの雨漏りを防ぐ・・・適切な時期にコーキングや外壁塗装を行う



屋根・外壁のメンテナンスは、命を守るためにとても大事なんだよ
まとめ
「屋根材を軽いものに替えたら耐震性が上がる!」けれどもそれだけでは不十分ということが伝わりましたでしょうか?
やねかべマイスターでは「屋根材を軽いものに替える」「建物を水分から守る」「瓦が釘留めされているかどうか確認する」ことで、お客様の命を地震から守るお手伝いをさせていただけたらと思います!





お気軽にお問い合わせくださいませ