下葺き材の歴史

茅葺き屋根

昔々、日本の屋根は「茅葺き」でした。茅葺き屋根には今のような「下葺き材」がなく、丸太や角材で組まれた屋根の上に竹で格子を組み、その上に茅を縄で押さえて葺きました。

「茅」は藁などを棒状の束にしたもので、雨水は※導水効果によって表面層だけを流れて、中には染み込まない仕組みになっていました。

導水効果とは

・・・侵入した水を拡散させずに、特定の経路を通して処理することを「導水」と呼びます。導水は雨水の侵入を未然にとめると言うよりは、入り込んできた水を処理する手法なので・・・(p.30)

大きな容器に入った液体、たとえば調味料を少量だけ小皿など別の器に移す時、容器の縁に箸を添えて、それに伝わるようにすると、こぼしたり、飛び散らしたりすることなくうまくいきます。これは、箸の表面が液で濡れることで液を引き付け、かつ離さない力をうまく利用しているわけですね。(p.59)

1本の棒で導水が可能なら、棒を束にすれば表面積が増すので、水を捕捉する能力も高まります。(p.59)

ちなみに、茅葺き屋根の表層部の導水効果が発揮されるのは、茅の形状が崩れず、導水部材としての性能が維持されている間であり、年数が経つにつれて茅は次第に小片状に分解して隙間を埋めていくため、表層部全体がスポンジ状になっていきます。こうなると導水による水処理機能は失われ、長雨が続くと雨が漏るようになります。(p.139)

石川 廣三、『Q &A雨仕舞のはなし』、彰国社、2018

こけら葺き、檜皮葺など

茅葺きの次に「こけら葺き」や「檜皮葺き」がありました。ヒノキスギサワラなど削ぎやすく水に強い材木を薄く切って何枚も重ねる工法で、雨の侵入を防いでいました。

memo

日本建築では、板の寸法や形状・葺き方によって施工の名前が変わります。

有名な杮葺き(こけらぶき)は、「木羽葺き(こばぶき)」「トントン葺き」「土居葺き(どいぶき)」とも呼ばれ、板葺きの中では最も高級で品が良いとされています。

こけら葺きの他に、「木賊葺き(とくさぶき)」「栩葺き(とちぶき)」「長板葺き」「木瓦葺き」「石置き板葺き」などがあります。

瓦屋根の下葺き材

瓦屋根は一般的に、下から「野地板」「杉皮や木羽板・杮板などの屋根葺き材」「土」「瓦」で構成されていています。水に強く腐りにくい材木を葺くことで、瓦の隙間から侵入した雨水を外部に流したり、木が呼吸することで調湿し屋根内部のムレによる腐れを防いでくれます。また、「土」にも調湿と断熱効果があり、万が一の雨漏りでも、ある程度土が吸収してくれます。

瓦やねの下から薄い木の皮が出てきました
屋根の裏側

現代では、「熟練の職人不足」「木を薄くスライスする加工工程」「工期の長さ」「新しい下葺き材の登場」などが理由で、木の下葺き材はほとんど使われなくなってしまいました。しかし、100年以上持った建物に木の下葺き材が使われていたことから、木材の耐久性がとても高いことがわかります。

Meiちゃん

瓦の寿命が60年以上と言われているから、瓦屋根は本当にメンテナンスフリーの屋根と言っても過言ではない・・・かな?

アスファルトルーフィング

らばQ HPより

アスファルト防水の歴史は長く、今から4500年程前の旧約聖書に登場する「ノアの箱舟」で「瀝青(れきせい)」と呼ばれる天然アスファルトが防水材として使われていました。アスファルトは水と融合せず弾く性質を持ち、比較的手軽に入手できる天然の防水材でした。

トリニダード・トバゴには「ピッチ湖」と呼ばれる世界最大の天然アスファルト湖があります。

日本では、縄文時代に接着剤として天然アスファルトが使われていたようです。1970年頃には秋田県産の天然アスファルトが橋や倉庫、貯水池の防水材料などに使用された記録が残っています。

アスファルトルーフィングの歴史

現在、やねかべマイスターでは田島ルーフィング株式会社の「ライナールーフィング」を使用しています。

アスファルトルーフィングの歴史を調べてみたところ、「歴史が古く記録があまり残っていない」「屋根以外の防水材として発展してきた」「輸入品と国産品の激しい闘い」などの理由ではっきりとしたルーツはわかりませんでした。下記はわかる限りの大まかな流れです。

田島ルーフィング株式会社のライナールーフィング
  • 1877年(明治10年)、博覧会にアスファルトルーフィングの原型に近い「油紙」や「紙瓦」が出品された。国産かどうかは不明だそう。
  • 1889年(明治22年)、米国製品のラバロイドルーフィングが輸入される。
  • 1901年(明治34年)、東京板紙株式会社が「土居葺き紙」を製造販売。「便利瓦」の第1号と言われる。
  • 1911年(明治44年)、日本建築用製紙株式会社が「アスファルトの便利瓦」の特許を出願。
  • 1919年(大正8年)、田島ルーフィング株式会社創業。「アスファルトルーフィング」の国産化に成功。
  • 1922年(大正11年)、日新工業株式会社創立。「マルエス印ルーフィング」の製造販売開始。
  • 1923年(大正12年)、関東大震災発生。トタンやスレート以外に、建築コストが抑えられる「便利瓦」も普及したと思われる。
  • 1927年(昭和2年)、日新工業が「アスファルトルーフィング」の製造装置特許登録。
  • 1928年(昭和3年)、日新工業が「アスファルトフェルト」製造装置特許登録。
  • 1934年(昭和9年)、関西地方に室戸台風が上陸。多くの被災者へルーフィングが普及。
  • 1961年(昭和36年)、田島ルーフィングが「不織布ルーフィング」の製造を開始。
  • 1963年(昭和38年)、田島ルーフィングが「補強不織布ルーフィング」を製造。
  • 1981年(昭和56年)、田島ルーフィングが「新強力不織布ルーフィング」を製造。
  • 1999年(平成11年)、常裕パルプ工業株式会社がルーフィング部門の営業を開始。

関東大震災が起こってから、それまで馴染みのあった「瓦」に代わって「トタン」や「スレート」と言った軽量で地震に強く、耐火性のある屋根材が使われるようになりました。同時に下葺き材も「木材」から軽量で防水性の高い「アスファルトルーフィング」へ変わっていったのではないかと思います。

memo

アスファルトを染み込ませた布を「布瓦/便利瓦」と呼んでいたことから、当初は「下葺き材」としてではなく「屋根材」として使われていたのかも知れません。

しかし、アスファルトの融点は50度と低く、真夏は非常に柔らかくなりすぎて染み込ませた紙からアスファルトが染み出てしまい、防水機能が著しく低下しました。また、冬は温度が低くなり硬化して柔軟性が失われるとヒビや亀裂が発生して防水機能が失われました。北米で普及率80%の「アスファルトシングル」が日本で普及しなかったように、火災や台風に弱い「アスファルトルーフィング」は耐久性が低く、屋根材としては普及できなかったようです。

下葺き材がアスファルトフェルト
下葺き材がアスファルトルーフィング

品確法の施行

2000年(平成12年)、欠陥住宅から住宅購入者を守るため「※品確法」が出来ました。※瑕疵担保責任の対象に「雨水の侵入を防止する部分」と義務付けられたことから、「防水シート」と「屋根材」の重要性はますます高まりました。

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/jutaku-kentiku.files/kashitanpocorner/consumer/newly_house.html)

品確法とは・・・

《「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の略称》住宅を安心して購入できるよう住宅性能に関する表示基準を設け、住宅の品質向上を図り、欠陥住宅などのトラブルから住宅購入者を守るための法律。平成12年(2000)4月施行。新築住宅については、柱・梁・床・屋根など住宅の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分について10年間の瑕疵担保責任が義務づけられた。

goo辞書より

平成21年(2009)施行、住宅瑕疵担保履行法とは(一部抜粋)・・・

《「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」の略称》新築住宅の売主等による特定住宅瑕疵担保責任の履行を確保するため、あらかじめ売主等に保証金の供託または保険への加入を義務付け、また、当該保険にかかる紛争の処理について定めたものである。

ウィキペディアより

現代の下葺き材の種類

職業柄、人様の屋根を観察する癖がついてしまったのですが、結構な確率で「コケが生えたスレート屋根」や「表面がボロボロした屋根」と遭遇します。雨漏りなどの実被害がないと、自分の家の屋根をまじまじと見ることはないと思いますが、寿命を迎えた屋根材は、防水することが出来ず下葺き材(防水シート)頼みになります。下葺き材(防水シート)は屋根材ではないので、屋根材が働かず常に雨が入っている状態になると、下葺き材(防止シート)の性能が落ちます。

天井の上には屋根裏があります。屋根裏で雨漏りしていても、天井に届くまで気づくことができません。

パミールの屋根

もし建築材料の中に水分が出入りすると・・・

〇材料強度低下

〇吸水膨張

〇乾燥収縮

〇断熱性の低下

〇鉄筋や鋼材の腐食

〇木材の不腐朽

〇塗膜の膨れ

などが起きてしまいます。

安心安全な暮らしを守るためには、屋根材と下葺き材(防水シート)はとっても大切なんです。

そんなとっても大事な防水シート。ビルの屋上や公共施設の屋根、バルコニーなど需要がたくさんあるため、用途や目的に応じてたくさんの種類が販売されています。それぞれにメリット・デメリットが存在するので、下記にまとめてみました。

Meiちゃん

屋根材よりも下葺き材(防水シート)の耐用年数が短いと、屋根材がまだもつにも関わらず下葺き材(防水シート)を交換しなくちゃいけなくなるよ!

現在流通している主な下葺き材 7つ

①「アスファルトフェルト

基材の紙にアスファルトを含浸させたもので、「アスファルトルーフィング」の基材として使われます。

「アスファルトフェルト」単体では、外壁下張り材として使用されます。

②「アスファルトルーフィング

一般的に屋根の下葺き材にはJIS規格(JIS A 6005)適合の「アスファルトルーフィング940」が使われます。

アスファルトフェルトの両面にさらにアスファルトをコーティングし、鉱物質粉粒を付着させたもので、勾配が低い平らな屋根に向いています。

耐用年数は10年くらいです。

田島ルーフィング株式会社 Pカラー/PカラーM
メリットとデメリット

【メリット】ルーフィングの中で最も費用が安い。透湿ルーフィングより止水性が高い。

【デメリット】透湿性が低いので、建物が結露する可能性がある。破れやすい。耐久性が短いので、ランニングコストがかかる。

田島ルーフィング株式会社 タディス セルフ

③「改質アスファルトルーフィング(原紙)

「アスファルトルーフィング」の性能を上げるために、合成ゴムやプラスチック樹脂などを添加したもの。

「ゴムアスファルト」、「ゴムアスルーフィング」「ゴムアス」とも呼ばれる。

勾配の緩い屋根や、改修などに向いています。

耐用年数は30年くらいです。

メリットとデメリット

【メリット】「アスファルトルーフィング」より破れにくく、止水性がアップした。熱に強くなり、耐久性が高まった。

【デメリット】「アスファルトルーフィング」より高い。結露の可能性は同じ。

④「改質アスファルトルーフィング(不織布)

「改質アスファルトルーフィング(原紙)」は紙がベースになっているのに対し、「改質アスファルトルーフィング(不織布)」は、改質アスファルト層を不織布と原紙で挟みこんだルーフィングです。

耐用年数は30年くらいです。

近年では不織布の施工例が増えていて、やねかべマイスターでは、田島ルーフィングの「ニューライナールーフィング」が標準仕様になっています

※1981年、ライナールーフィング発売⇒2014年、ニューライナールーフィングへ仕様変更

田島ルーフィング株式会社 ニューライナールーフィング
メリットとデメリット

【メリット】「原紙」に比べて破れにくくなった。職人の腕にあまり左右されずに防水性を保つことができる(施工性が良い)。建物の動きにも追従する柔軟性がある。防水性・耐久性がアップした。

【デメリット】「原紙」より高い。

田島ルーフィング株式会社 タディス セルフ カバー

⑤「粘着性 改質アスファルトルーフィング

「改質アスファルトルーフィング(不織布)」に粘着性を追加したルーフィングです。

「ニューライナールーフィング」と同等の品質で、やねかべマイスターではボロボロになってしまった屋根材に、カバー工法を施工する際に「タディスセルフカバーを使用します

耐用年数は30年くらいです。

※2014年発売

メリットとデメリット

【メリット】厚みが薄いため軽量。施工性・下地追従性に優れている。不織布を使用しているため、既存のスレート屋根などで破れる心配がない。粘着性があるので、強度・釘穴のシール性に優れている。防水性が高い。

【デメリット】「アスファルトルーフィング」の4~5倍くらいの価格。

⑥「高分子系ルーフィング

合成ゴムや塩化ビニルを原料とした、アスファルトが基材ではないルーフィングシートを総称して「高分子系ルーフィング」と呼ぶことがあります。主に陸屋根に利用されています。

ケイミューの「ノアガードⅡ」は基材に特殊膨潤樹脂を使用しています。

耐用年数は15年くらいです。

ケイミュー ノアガードⅡ
メリットとデメリット

【メリット】軽量。伸縮性が良いので、下地の亀裂などに影響されないため、施工性が良い。

【デメリット】平面の下地にしか施工できない。紫外線で劣化しやすい。接着剤の劣化で防水機能が落ちる。シートが薄いので破れやすい。

旭・デュポン フラッシュスパン プロダクツ株式会社

⑦「透湿防水ルーフィング

家の中の湿気を逃がすことのできる防水シートです。家の中の水蒸気を外に逃がし、上からの雨水を下に通さないという特徴があり、濡れても乾燥しやすいので雨が多い地域や、木造の家、高気密高断熱住宅に向いています。

耐用年数は50年くらいです。

メリットとデメリット

【メリット】湿気を通すので結露しにくい。濡れても乾燥しやすい。耐久性がとても高い。

【デメリット】透湿性能を保つための施工技術が必要。通気工法を併用する施工が必要なため、初期費用が高い。施工に時間がかかる。非透湿防水シートより防水性能が劣る。

主なメーカーの下葺き材一覧表

Meiちゃん

下葺き材は後から見えないので、コストダウンの対象になりやすいんだ。
将来の雨漏りを考慮して、信頼できる屋根のプロに選んでもらおう!