
このページでは「下葺き材」について説明するよ
下葺き材の歴史
茅葺き屋根


昔々、日本の屋根は「茅葺き(かやぶき)」でした。茅葺き屋根には今のような「防水シート」がなく、丸太や角材で組まれた屋根の上に竹で格子を組み、その上に茅(かや)を縄で押さえて葺きました。
「茅」は藁などを棒状の束にしたもので、雨水は導水効果によって表面層だけを流れて、室内には染み込まない仕組みになっていました。


昔々、日本の屋根は「茅葺き(かやぶき)」でした。茅葺き屋根には今のような「防水シート」がなく、丸太や角材で組まれた屋根の上に竹で格子を組み、その上に茅(かや)を縄で押さえて葺きました。
「茅(かや)」は藁などを棒状の束にしたもので、雨水は導水効果によって表面層だけを流れて、室内には染み込まない仕組みになっていました。
導水効果とは・・・
大きな容器に入った液体、たとえば調味料を少量だけ小皿など別の器に移す時、容器の縁に箸を添えて、それに伝わるようにすると、こぼしたり、飛び散らしたりすることなくうまくいきます。これは、箸の表面が液で濡れることで液を引き付け、かつ離さない力をうまく利用しているわけですね。(p.59)
1本の棒で導水が可能なら、棒を束にすれば表面積が増すので、水を捕捉する能力も高まります。(p.59)
石川 廣三、『Q &A雨仕舞のはなし』、彰国社、2018
こけら葺き、檜皮葺など
茅葺きの次に「柿葺き(こけらぶき)」や「檜皮葺き(ひわだぶき)」がありました。ヒノキやスギ、サワラなど削ぎやすく水に強い材木を薄く切って何枚も重ねる工法で、雨の侵入を防いでいました。




日本建築では、板の寸法や形状・葺き方によって施工の名前が変わります。
有名な「柿葺き(こけらぶき)」は、「小羽葺き(こばぶき)」「トントン葺き」「土居葺き(どいぶき)」とも呼ばれ、板葺きの中では最も高級で品が良いとされています。
「柿葺き」のほかに、「木賊葺き(とくさぶき)」「栩木葺き(とちぎぶき)」「長板葺き」「木瓦葺き」「石置き板葺き」などがあります。
瓦屋根の下葺き材
昔の瓦屋根は、下から順に「野地板」→「杉皮や木羽板・杮板など」→「土」→「瓦」で構成されていました。水に強く腐りにくい板を葺くことで、瓦の隙間から侵入した雨水を外部に流したり、木が呼吸することで調湿し屋根内部のムレによる腐れを防いでいました。また、「土」にも調湿と断熱効果があり、万が一の雨漏りでも、ある程度土が吸収してくれていました。








神社や仏閣など、100年以上持った建物に木の下葺き材が使われていたことからも、木材の耐久性がとても高いことがわかります。
現代では、熟練の職人不足、木を薄くスライスする加工工程、工期の長さ、新しい防水シートの登場などが理由で、木の下葺き材はほとんど使われなくなってしまいました。
アスファルトルーフィング


アスファルト防水の歴史は長く、今から4500年程前の旧約聖書に登場する「ノアの箱舟」で「瀝青(れきせい)」と呼ばれる天然アスファルトが防水材として使われていました。アスファルトは水と融合せず弾く性質を持ち、比較的手軽に入手できる天然の防水材でした。
トリニダード・トバゴには「ピッチ湖」と呼ばれる世界最大の天然アスファルト湖があります。
アスファルト防水の歴史は長く、今から4500年程前の旧約聖書に登場する「ノアの箱舟」で「瀝青(れきせい)」と呼ばれる天然アスファルトが防水材として使われていました。アスファルトは水と融合せず弾く性質を持ち、比較的手軽に入手できる天然の防水材でした。


トリニダード・トバゴには「ピッチ湖」と呼ばれる世界最大の天然アスファルト湖があります。
日本では、縄文時代に接着剤として天然アスファルトが使われていたようです。1970年(昭和45年)頃には秋田県産の天然アスファルトが橋や倉庫、貯水池の防水材料などに使用された記録が残っています。


アスファルトルーフィングの歴史
アスファルトルーフィングの歴史を調べてみたところ、「歴史が古く記録があまり残っていない」「屋根以外の防水材として発展してきた」「輸入品と国産品の激しい闘い」などの理由ではっきりとしたルーツはわかりませんでした。下記はわかる限りの大まかな流れです。
歴史年表 | |
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1877年 (明治10年) | 博覧会にアスファルトルーフィングの原型に近い「油紙」や「紙瓦」が出品された。国産かどうかは不明。 |
1889年 (明治22年) | 米国製品のラバロイドルーフィングが輸入される。 |
1901年 (明治34年) | 東京板紙株式会社が「土居葺き紙」を製造販売。「便利瓦」の第1号と言われる。 |
1911年 (明治44年) | 日本建築用製紙株式会社が「アスファルトの便利瓦」の特許を出願。 |
アスファルトを染み込ませた布を「布瓦/便利瓦」と呼んでいたことから、当初は「下葺き材」としてではなく「屋根材」として使われていたのかも知れません。
しかし、アスファルトの融点は50度と低く、真夏は非常に柔らかくなりすぎて紙からアスファルトが滲み出てしまいました。また、気温が低くなる冬はアスファルトが硬化して柔軟性が失われ、ヒビや亀裂が発生してしまいました。
このような特徴をもつ「布瓦/便利瓦」は、屋根材としては普及できなかったのではと考えられます。
1919年 (大正8年) | 田島ルーフィング株式会社創業。「アスファルトルーフィング」の国産化に成功。 |
1922年 (大正11年) | 日新工業株式会社創立。「マルエス印ルーフィング」の製造販売開始。 |
1923年 (大正12年) | 関東大震災発生。トタンやスレート以外に、建築コストが抑えられる「便利瓦」も普及したと思われる。 |
関東大震災が起こってから、それまで馴染みのあった「瓦」に代わって「トタン」や「スレート」と言った軽量で地震に強く、耐火性のある屋根材が使われるようになりました。同時に下葺き材も「木材」から軽量で防水性の高い「アスファルトルーフィング」へ変わっていったのではないかと思われます。
1927年 (昭和2年) | 日新工業が「アスファルトルーフィング」の製造装置特許登録。 |
1928年 (昭和3年) | 日新工業が「アスファルトフェルト」製造装置特許登録。 |




1934年 (昭和9年) | 関西地方に室戸台風が上陸。多くの被災者へルーフィングが普及。 |
1961年 (昭和36年) | 田島ルーフィングが「不織布ルーフィング」の製造を開始。 |
1963年 (昭和38年) | 田島ルーフィングが「補強不織布ルーフィング」を製造。 |
1981年 (昭和56年) | 田島ルーフィングが「新強力不織布ルーフィング」を製造。 |
1999年 (平成11年) | 常裕パルプ工業株式会社がルーフィング部門の営業を開始。 |
2000年 (平成12年) | 品確法の施行 |



2000年に欠陥住宅から住宅購入者を守るために「品確法」が施行されたよ!
品確法とは・・・
《「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の略称》住宅を安心して購入できるよう住宅性能に関する表示基準を設け、住宅の品質向上を図り、欠陥住宅などのトラブルから住宅購入者を守るための法律。平成12年(2000)4月施行。新築住宅については、柱・梁・床・屋根など住宅の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分について10年間の瑕疵担保責任が義務づけられた。
goo辞書より
売主に「雨水の侵入を防止する部分について10年間の瑕疵保険責任が義務付けられた」ことから、「防水シート」と「屋根材」の重要性はますます高まりました。


現代の下葺き材について
下葺き材(ルーフィング)の役割とは


木造建物の屋根は、屋根材(一次防水)と下葺き材(二次防水)の2段階で雨水を建物内に侵入させないようにしています。
木造建物の屋根は、屋根材(一次防水)と下葺き材(二次防水)の2段階で雨水を建物内に侵入させないようにしています。


もし屋根材の下に雨水が入っても、建物の内部に侵入することなく、下葺き材を通って屋根材の隙間から抜ける仕組みになっています。







もともと雨水が入る想定なんだね!
しかし、屋根材と下葺き材には寿命があります。どちらか又は両方が正常に機能していないと建物内に雨水が侵入してしまいます。







屋根裏があるから、雨水が天井まで届かないと、なかなか雨漏りに気づけないんだ
もし建物の中に水分が出入りしていると・・・




〇材料強度低下
〇吸水膨張
〇乾燥収縮
〇断熱性の低下
〇鉄筋や鋼材の腐食
〇木材の不腐朽
〇塗膜の膨れ
などが起きる恐れがあります。



安心安全な暮らしのために、屋根材と下葺き材はとっても重要なんです!
そんなとっても大事な下葺き材。用途や目的に応じてたくさんの種類が販売されています。それぞれにメリット・デメリットが存在するので、下記にまとめてみました。



現在流通している主な下葺き材は6つだよ
①アスファルトフェルト
基材の紙にアスファルトを含浸させたもので、「アスファルトルーフィング」の基材として使われます。
「アスファルトフェルト」単体では、屋根用ではなく外壁下張り材として使用されます。
下記は一例です。
②アスファルトルーフィング
一般的に屋根の下葺き材には、JIS規格(JIS A 6005)適合の「アスファルトルーフィング940」が使われます。
「①アスファルトフェルト」の両面にさらにアスファルトをコーティングし、鉱物質粉粒を付着させたもので、1㎡あたりの重さが940g以上、21mが一巻きになっています。
段々と柔軟性が無くなり切れやすくなるため、約10~20年がメンテナンス時期と言われています。



940gより軽いのは性能に問題アリだよ!
⚫︎ルーフィングの中で最も価格が安い
⚫︎密着性と止水性が高い
⚫︎耐用年数が短い
⚫︎あまり丈夫ではなく、破れやすい(雨漏りにつながる)
⚫︎耐久性が低いので、ランニングコストがかかる
③改質アスファルトルーフィング(原紙)
「②アスファルトルーフィング」に合成ゴムやプラスチック樹脂などを添加して性能をUPさせたもの。
「ゴムアスファルト」、「ゴムアスルーフィング」「ゴムアス」とも呼ばれます。
ベースが紙のため不織布と比べると破けやすく、屋根カバー工事には適していません。
下地が平らな新築または新しく合板を貼る葺き替え工事向きで、耐用年数は20~30年以上と言われています。



耐用年数は商品によっても異なるので注意が必要です
⚫︎「アスファルトルーフィング」より破れにくい
⚫︎止水性がアップした
⚫︎熱に強くなり、耐久性が高まった
⚫︎重ねたところが浮かないため、低勾配向き
⚫︎「②アスファルトルーフィング」より高価
⚫︎「④改質アスファルトルーフィング(不織布)」より破けやすい
⚫︎粘着なので、湿気が抜けにくい
⚫︎屋根カバー工法工事には向いていない
④改質アスファルトルーフィング(不織布)
「③改質アスファルトルーフィング(原紙)」は紙がベースになっているのに対し、「④改質アスファルトルーフィング(不織布)」は、改質アスファルト層を不織布と原紙で挟みこんだルーフィングです。
価格と品質のバランスが1番取れているためコスパが良く、近年のリフォーム市場ではこのタイプが主流となってきています。
耐用年数は20~30年以上と言われています。



やねかべマイスターでは、ニューライナールーフィングを標準仕様としています!
⚫︎「③改質アスファルトルーフィング(原紙)」と比べて破れにくくなった
⚫︎職人の腕に左右されずに防水性を保つことが出来る
⚫︎建物の動きに追従する柔軟性がある
⚫︎耐久性が高いのでランニングコストが抑えられる
⚫︎「③改質アスファルトルーフィング(原紙)」より高価
⚫︎3.5寸未満の勾配屋根にはお勧めしない
⑤粘着性アスファルトルーフィング(不織布)
「④改質アスファルトルーフィング(不織布)」に粘着性を追加したルーフィングです。
やねかべマイスターでは、3.5寸未満の勾配屋根にこの粘着性アスファルトルーフィングを使用します。
耐用年数は25年以上と言われています。
⚫︎密着性・防水性が高い
⚫︎釘穴のシール性に優れている
⚫︎不織布なので破れにくい
⚫︎重ねたところが浮かないため、低勾配向き
⚫︎粘着性で貼り直しが難しいため、夏場の施工は技術が必要
⚫︎「④改質アスファルトルーフィング(不織布)」より耐久性が劣る
⑥高分子系ルーフィング
合成ゴムや塩化ビニルを原料とした、アスファルトが基材ではないルーフィングを総称して「高分子系ルーフィング」と言います。
「遮熱ルーフエアテックス」や「タイベック」は透湿シートと呼ばれ、繊維の隙間から湿気が抜けていくため結露を防ぎ、木材や断熱材の乾燥状態を保つ特徴があります。


「ノアガードⅡ」は非透湿性ですが、遮熱タイプがあります。「ルーフラミテクト」も同じシリーズに遮熱・透湿性を備えたものがあります。
高分子系ルーフィング最大の特徴は、アスファルト系ルーフィングと比べて1/3~1/4ととても軽量なところです。
しかし、透湿シートには湿気を逃がすための通気層が必要なため、瓦屋根のような通気性がある施工方法以外の屋根(スレートや金属屋根、アスファルトシングル)にはお勧めできません。
⚫︎アスファルト系と比べて軽量
⚫︎重い屋根に使用することで耐震性UPが期待できる
⚫︎湿気を通すので結露しにくい
⚫︎ものによっては耐用年数50年以上と高耐久
⚫︎アスファルト系と比べて高価
⚫︎3寸未満の低勾配には使用できない
⚫︎通気層が確保できない構造の屋根には使用できない
⚫︎アスファルト系より防水性能がやや劣る
主なメーカーの下葺き材一覧表







下葺き材は隠れて見えなくなっちゃうので、コストダウンの対象になりやすいんだよ



将来雨漏りしないためにも、信頼できる業者さんに選んでもらおう!
下葺き材の貼り替え費用
下葺き材は屋根材の下にあるため、下葺き材だけの貼り替えはできません。



屋根全体を工事した場合の参考価格はこちらをご覧ください♪
まとめ
下葺き材(ルーフィング)にはたくさんの種類があることが伝わりましたでしょうか?



どれが自分の家に使えるのかよくわからないわ



そんな時は、やねかべマイスターにお任せください!

